so long, 岡田武史

 ついに、来るべきものが来てしまったなぁという、不思議に凪いだ気持ちでいます。監督交代に関して、あまりショックや驚きがありません。思えばもういつからか、監督交代の可能性が、なにかにつけ脳裏にちらついていた。私にとっての恐れ?は、「それが起きるかどうか」ではなく、「いつ訪れるのか」だったのだなぁと、改めて思っています。
 W杯開催を受けた6月の中断期に、監督交代の話が出なかったので、正直私は今年はこのまま行くんだろうと思っていました。どういう結果を招くことになっても、フロントはこのまま岡田さんと心中する覚悟なのだろうと。だから逆の意味では、やはりちょっと驚いたのかもしれません。自分でも、なんだかよく判らない。でも「意外感」はなくて、「やっぱり」とか「とうとう」とか、そういう気持ちでした。

 公式の発表を見てすとんと納得したのは、「あ、解任じゃないんだ。岡田さん辞任なんだ」ということ。また監督経験が一度も無い水沼さんが昇格するということで、その辺りに妙に納得してしまいました。いいとか悪いとかではなく、ただ、「ああ」と思った。
 なぜ新しい監督候補をこれまでの期間にリストアップしておかなかったのか、という意見もありそうですが。やっぱりそれは、どうあれ心中する覚悟だったから、用意してなかったんじゃなかろうかと、私は勝手に想像しています。危機意識薄いと言えば、そうかもしれないけど。なんというかその辺り、一貫して岡田武史その人を信じたという意味では、社長の男気の表れと読み解く部分なのかもしれません。繰り返しになりますが、いい悪いを度外視して。
 横浜フロント側が、3年以上チームを率いるつもりのなかった(だろう)岡田さんを引っ張っていた部分も多少あっただろうと思います。勿論、プロとして引き受けた以上、4年目以降に対する、なにがしかの目論みや考えもあったのだろうと思いますが…。岡田さんにも、上手く行かないことづくめで、つらい半年になったのかもしれません。またどこかでサッカーに携わっていかれると思いますが、ハードな監督業を3年と半年、疲れも溜まったことでしょう。今はゆっくり休養してください。今となっては、岡田監督最後の采配になった先日の大宮戦を、見届けられなかったことが、非常に残念です。
 水沼さんにとっては、シーズン途中からという、難しい状況での初監督就任となりました。でもずっと横浜を見続けてきた水沼さんにしか見えないものも、きっとあるはず。それを生かして、チームをまとめて戦って行って欲しいと思います。勿論、引き続き、私も及ばずながら応援し続けていくつもりです。



 私はわりにはっきりと、岡田さんが好きでした。このところはずっと結果も出ていなかったこともあり、若手起用に積極的でない面など、疑問や不満がまるでなかったとは言えないけれど、監督コメントの出し方や、メディアとの接し方などでも、非常に選手やチームに対して細心の配慮をしている印象で好感がありました*1。そういう監督だからこそ、選手も付いていこうと思ってやってきたと思うし、信頼を勝ち得ていたのだろうと思います。
 今頃、選手はとても悔しい気持ちでいるだろうと思います*2。試合をするのは選手達だから、思うような結果を出せなかったのは監督ばかりの所為じゃない。監督を辞めさせるようなことにしてはいけないんだと、選手の皆さんが一番強く思っていたのではないでしょうか。
 ただ今のこの状況に、これ以上、手をこまねいているわけにはいかない。それほどチームの状態は悪化していたということでしょう。だからこそ、岡田さんご自身が、辞任という形を取られたのではないかと思いますので、選手の皆さんには俯かず、前を向いて気持ちを新たに頑張って頂きたいと思います。これまでだって頑張っていたのだろうとは思いますが、監督交代という事実を踏まえて尚一層、気持ちを引き締めていくしかない。勿論、頑張るのは選手の皆さんや新しく監督に就任する水沼さんだけではなくて、フロントも含め、チームをサポートし応援する人達もみんなですよね。これから、残りの試合をどう戦っていくのか、それがなにより重要なことなのだと思います。



 これまで、良い記憶も悪い記憶もある。岡田さんとチームが共に歩んで、共有してきたもの。岡田監督と一緒に得て来た経験が、沢山あると思うのです。優勝という素晴らしい経験、そしてアジアを戦う難しさ、厳しさもまた、得がたい経験だったと思います。そして今、こうしてチームがばらばらになって、苦しんでいることも、いつかの糧になる経験のはず。そういうものを無意味にしない努力、あと一歩を惜しまない意識こそ、岡田さんが就任して最初にチームに植えつけたことだった。そしてそれらのものが優勝に結びついたと思うから、選手はそれを忘れず、今をきっと次へつなげてくれるはず。

 岡田さん、いつかまたどこかで、一緒のピッチで、サッカーをしましょう。岡田さんが相手チームの時には、横浜は全力で負かしに行きます*3。今まで、沢山の経験をありがとう。――それでは、また、どこかで。

*1:別に取り立てて面白いコメントや言い回しをする人ではなかったと思いますが、決して表立って選手批判をしない点や、選手が聞いてマイナスに思うようなことを監督コメントとしては発表しない点が、私の岡田さんに対する良いイメージになっています。その結果として、監督コメントからその日の試合内容を想像し難い、という問題も発生していましたが、それはまあそれとして、チームマネジメント法の一つだろうと思います。

*2:特に那須とか、山瀬とかは、それぞれに監督に対して特別な思いがありそうなだけに、悔しいのではないかと勝手に想像している…。

*3:それが元監督に対する最大限の恩返しだと思うから!