中澤佑二、誇りを胸に、今。

 W杯が開幕し、日本のグループリーグも既に二戦が終了。あと何時間か後には、とうとう運命のブラジル戦が始まります。私は、やっと今頃になって、「吹っ切れた」ような気がしています。

 いえ、別にオーストラリア戦やクロアチア戦の結果を、今の今まで引きずっていたということではなく。私の心の中で、全開で応援という状態になれていなかったかもしれないなと、今になって気付いた、というか。出来うる限り気持ちを割いて中継を見て、代表を応援しているつもりでしたが、まだまだ心のどこかで、エクスキューズを探していたところがあったのかもしれないと。今になると思う。

 ブラジル戦では、これまでキャプテンを務めていた宮本選手が、警告累積で欠場。ジーコのこれまでを考えれば、「ブラジル戦のキャプテンはヒデ」というのが大方の予想でした。でもどうやらゆーじさんが、その任に当たることが決まったようです。生真面目で、責任を強く感じる性格の選手でしたから、横浜でキャプテンを務めていたことが重荷になって、知らず一選手としてのパフォーマンスに陰を落としたこともあるゆーじさん。そのゆーじさんが、この大舞台でキャプテン。プレッシャーを感じるなと言ったところで、無理というものでしょう。コイントスの場面の遣り取りは、ツネさんにようく教えていただくこととしても(笑)。*1

 大変な試合のキャプテンを引き受けることになった訳ですが。でも、考えようによっては、これほど立ち位置と方向性のはっきりした、「迷いの湧かない」試合も珍しいのではないだろうかと思うのです。ブラジルに2点以上取って勝たなければならない、それにはとにかく集中して攻めて、点を取ることです。恐らくこの試合は、「それ以外の状況」になって、方針がぶれることにはならないと思うから。ゆーじはキャプテンとして、その点に関して、迷う必要がない。ただ、懸命に攻めて、ゆーじは守備の要として、いつも通り集中してゴールを守ってくれればいいのです。
 追い込まれて、結果非常に視界が「明確」になったのです。そう思ったら、それまでもやもやしていた気持ちが、突然すうっと晴れて行くような気がしました。昨日夜、暗くして布団の中で、私もやっと開き直ったんだね(苦笑)。

 そして、そういう気持ちになってみて、もう一つ改めて思ったことは。既に決勝トーナメント進出を決めているとはいえ、W杯というサッカーにおいて最高の舞台で、ブラジルと対戦できるということ。どんなに望んでも本気のブラジル*2と対戦できる選手は、そう多くはない。組み合わせの妙もあり、一生そんな機会に恵まれないまま、選手生命を終える人もいる。それを考えたら、これほど恵まれた舞台もない。そう言える試合なのかもしれません。
 その舞台に、横浜からゆーじさんがキャプテンとして出場する。それを応援できる幸せ。これ以上、応援冥利に尽きることってないんじゃないかと、改めて思えたのです。

 失うものは、本当になにもない。ゆーじさんにも、キャプテンだからといって変に気負ってしまうことなく、いつも通り、試合に臨んでいただきたいと思います。そして何より、これだけの舞台を、誰よりも、余すところなく存分に、全身で楽しんで来て欲しい。そう心から願っています。ゆーじさんなら、楽しんで来てくれると、信じています*3
 そんな風に思ったら、急にブラジル戦が、楽しみで楽しみで仕方がない。今までW杯!W杯!と盛り上がっていた一部の人達の中には、先日のクロアチア戦以降、急速に冷めて来ている方もおられるような気がするのですが(苦笑)。私は今日が、W杯が開幕して以来、一番ワクワクしています。



 遅すぎるとお叱りを受けるかもしれませんが、今頃、気持ちがフルスロットル。
 頑張れゆーじ。頑張れ日本代表。最後の一瞬まで、走れ。信じろ。「勇気と闘志 誇りを胸に」。

*1:『意外な“悩み”は、試合前の相手とのフラッグ交換とコイントス。「順序が分からない。それが不安なんですよ」と苦笑い』→【http://www.sanspo.com/soccer/top/st200606/st2006062203.html

*2:実際には主力休養もあるので、本気とは言いがたい状況になるかもしれませんが、少なくとも親善試合ではない、公式戦という意味においては

*3:いやスーパーサッカーのインタビューでは「DFは楽しめないっすよ!」とは仰っておられましたが、それはこの際、都合よく置いておくとして(苦笑)。