大橋、去りてのち。

大橋移籍の正式発表を受けて、きちんとフェアウェルエントリを書こうと思いまして。今日ちまちま準備をしていたら。大橋オフィシャルのメッセージが更新されているではないですか(Error 404 Not Found)。
マリノスで戦うつもりでいたこと、マリノス含め3チームからオファーがあり、東京Vの熱心なオファーが移籍の決め手になったこと。恐らく誰もが聞きたかったあれこれを、大橋自身の言葉で率直に語ってくれていて、嬉しくなりました。
現在は19日の始動日に照準を合わせ、トレーニング中とのこと。発表以来気が抜けてしまっていたのですが、大橋の前向きな様子に触れて、「元気を出さねば!」と吹っ切れました。
本当に心から、大橋の活躍を応援してます。ACLはどこかのタイミングで見に行けたらと思っているので、その時は是非元気に出場・活躍する姿を見せて欲しいなと思います。頑張れ。



以下は、大橋公式の更新に気付くまで、ちまちま準備していたイタくてキモい長文雑記(笑)。折角なので、記念にあげときます。



大橋完全移籍は、やはりショックでした。すごく期待を持って見ていた選手の一人だったし、05年の活躍があればこそ、今年は尚いっそう飛躍した姿を見られるだろうと疑っていませんでした。だからその決断を聞いて、正直寂しい気持ちでいっぱいです。でも私の感じた寂しさは、大橋が「東京Vを選んだ」寂しさではないよ。
ただ大橋が「マリノスから去ってしまう」ことの寂しさです。
今まで居てくれた大橋の場所が、ぽかんと空白になってしまう。その欠落感を持て余しているのです。どんなに気持ちを切り替えようとしたところで、大橋の不在に、そんな急には慣れられない。それも仕方がないかなと思っています。だって大橋は小学生の頃から、もう長いことずっと「マリノス」の選手だったんだからね。
でもこの「欠落」の虚ろにも、いずれ慣れる。やがて新しいシーズンが始まれば、大橋の残した空白そのものがなくなる。その時、大橋が新しいステージで活躍していれていればいいと、心から思っています。



東京Vは、昨年活躍していた主力級選手の移籍が続き、連日大きく報道されています。ただでさえ厳しいJ2の日程の中、消耗の激しいACLまで戦わなければなりません。それはある意味ではマリノスにいるよりずっと、ずっと厳しく辛い戦場に身を置くということかもしれない。
でも私は、大橋自身が「望んで」それを選んだと思ってる。
オファーが来て決断したのだから、当然「望んで」移籍したんだろうと言われるかもしれませんが、そういう意味以上に大橋が、「厳しい環境に身を置くことを望んだ」のだろうと、私は思っています。
マリノス周辺ブログを書かれている方は、大橋の決断をネガティブなものと取っておられるようです。多くは「奥や山瀬といった選手とのポジション争いから逃げた」移籍という見方の為です。
確かにマリノスを応援している立場からすれば、大橋の決断はそう見えても仕方がないし、移籍する時点で何がしかの謗りを受けることも大橋自身、覚悟もあるでしょう。ある意味で「(マリノスサポとしての)健康的な反応」ともいうべきもので、当然のことです。
けれど私は今回の大橋の決断を、「奥や山瀬といった選手とのポジション争いから逃げた」という風に読み解いてしまうのは、少し酷ではないかと思うのです*1



大橋がマリノスでコンスタントに出場する為には、奥や山瀬といった選手とポジション争いをしていかなければなりません。実際05年は、奥や山瀬の怪我や不調といった事情もありましたが、そうした中で出場時間を伸ばして来ました。フィジカルに不安があることなど、全てが全ていいところばかりとはいかなかったでしょうが、彼の良さも見ることの出来たシーズンだったと思います。殊にFKやゴール前でのパスには、何度も痺れさせてもらいました。
大橋に対しては、マリノス生え抜き選手に対する大きな期待の裏返しか、時に厳しい声も多く聞かれました。本人もそれが届いているのか、彼のオフィシャルではシーズン後半になるにつれ、サポーターの声に対する意識を透かすような言葉が増えましたね。

一番印象に残っているのは、「大さんでも功治でもないから」という言葉。この言葉を書いた時、もしかすると彼はすごく苦しかったのかもしれないけれど、私はなんとなく嬉しかった。たとえ誰も比べなかったとしても、恐らく彼自身が一番、「大さん」と「功治」の存在を強く意識して、比べることがあったのでしょう。それだけ近くで一緒にいるのだから。それでなくとも雑誌やネットで、知りたくなくても外から色んな声は聞こえてくる。比べないでいることの方が、もしかしたらずっと難しい。
もしかしたら自分の言葉で、自分の気持ちを支えるところもあったかもしれません。でももしそうした状況だったとしても、その中で、「(自分は)大さんでも功治でもないから」という言葉を言ってくれたのが嬉しかった。人の気持ちは、器の形に案外簡単に影響されるものだから、大橋がそう言う気持ちがあるのなら、大橋は「大橋らしさ」という武器を鍛えて、戦ってくれると思ったからです。
年末の「来年が勝負だと思っていますし、厳しい目で見てもらい、期待もして欲しい」というコメントも、すごく頼もしく受け取りました。もっとも、このコメントがあればこそ、移籍という決断を受け入れるのが、すごく苦しくもあったわけですけれども…。



大橋がマリノスというチームを離れるにあたって、これまで言ってきた言葉を反故にしたとは、思わない。というより、思えない。長年ずっとマリノスで育って、勝手知ったる居心地のいい居場所。間違いなく「ホーム」であった場所。それが大橋にとって、マリノスというチームだったのではないだろうか。その一番大切な場所を、そんな簡単に切り捨てることなんかきっと出来ない。でも大橋は、敢えてその一番切り捨てがたい、自分の一部みたいなものを、断ったのではないかな。自分が成長する為、逃げずに戦い抜く為に。
大橋は逃げたんじゃない。より「戦わなければならない場所へ」、「自らを追い込み」「飛び込んだ」のだと思うのです。

マリノスでずっと育った大橋にそれくらいのメンタリティが備わっていると、今信じてやれるのもまた、マリノスを応援している人達だけではないのかな*2
大橋が決めたことだから、その決断と、決断に至った感情や意思を、出来る限り大事にしたい。だから今回の完全移籍という決断を下した大橋を、私は出来る限り肯定的に解釈して、送り出してあげたいのです*3






と、まあ色々書き連ねてきてみましたが。しかしそれでもどうしても寂しくて。大橋移籍の正式発表から、半分抜け殻みたいな気持ちでいたら、こんな言葉を書かれているブログさんがありました。

こんな状況のヴェルディに可能性を信じて来てくれた選手、或いは自分自身を崖っぷちに追い込んで奮起しようと頑張る選手、ここが最後の戦場だと覚悟を決めてくる選手・・・

皆、ヴェルディのひとりなのです。
http://d.hatena.ne.jp/jian_si2003jp/20060111/p1

こちらの「ヴェルディのひとり」という言葉に、何故だか塞いだ気持ちがふっと軽くなる気がしました。大橋は新しいチームで、これからまた自分の居場所を作っていく。当たり前のことのようだけれど、そのことに少し嬉しくなりました。
上記記事には、「大切にしますといっても、特別な何ができるわけでもありません」という言葉もあります。私が言うのもおこがましいですが、多分特別なことなんてきっと全然必要ありません。他の選手と同じように、ただ当たり前に大橋のことも、迎えてくださればと思います。そして東京Vのサポの皆さんが、どうか大橋のいいところを一つでも多く見つけて応援して下さるよう、今は願ってやみません。



進んでいくことを恐れないからこそ、マリノスサポは大橋の背中を見送ることになったんだと、自身の活躍で証明して欲しい。
大橋。今までありがとう。一緒に戦ったこと、忘れないよ。J1で対戦出来るのを待ってます。

*1:勿論これは私の考え方なので、このエントリは別に「皆さんに同じように考えて欲しい」等強要するものではありません。その点どうぞ誤解のないようお願いします

*2:東京Vのサポさんは歓迎してくださる方もいると思いますが、まだ「海のものとも山のものとも」というところがあるでしょうからね

*3:甘い、キモいと言われるのを判っていてもな…