綿矢りさ「インストール」

インストール (河出文庫)

インストール (河出文庫)

実は買って積んだまま、しばらーく忘れてて…(苦笑)。やっと読んだよ(遅いよ!)。



出てくる子出てくる子みんな、すっごいキラキラしてた。眩しかった…! ああ、かわいいなぁ。学生ってみんなこんなだったっけと思った(笑)。こんなにも彼等をかわいらしいと思ったのは、私がこの作品に出て来ているような人物の抱える焦燥の時代を、既に通り過ぎているからかもしれない。でもだからこそ、すごく彼等がどんなに閉塞感を感じて、真っ暗な闇の中で息が苦しくて喘いでいても、目映いばかりの何かを発しているように見える。多分、それは現在の彼等には見えない・きっと感じられないことなんだろうけど。ああ、堪らなくいとおしい話だなぁ…。

すごくよく伝わる。彼等の焦燥とか、表現しつくせないもやもやした感じが。そしてそれを「ありきたり」だと断言して、「ベル席から始めなよ」というお小言をくれる友達の子の気持ちも、よく判る。
実際、部屋の中の自分の持ち物、本棚からベッドに至るまで全て、捨て去りたいという衝動って、よく判る。私もそういう衝動って今でもよく起こるけど、もう実際に捨てる行動を起こす元気が私にはなくなっちゃったな(笑)。というか、本棚ベッドはともかくとして、荷物を全部捨て去ってみたところで、「どうせ何も変わらないんだし」というありふれた諦念を、もう何度も感じたから、やらなくなったのかな。判らないけど。
うん、でもこの話を17歳で書いた、というのは、やっぱり凄いなぁと。言い尽くされたことだろうけど、つくづく思いました。高校生で、ここまで客観性って持てるものなんだなぁ。面白かった。久しぶりに、素敵なジュブナイルに出会ったみたいな幸福感を感じられたよ。
ジュブナイルと言ってしまうと語弊があるかもしれないけど、この場合、ごく私的なカテゴリ分けみたいなもので。「十代の主人公が、等身大の現実を生きている話」という程度の意味を指してます。最近、そのくらいの年齢の人達が読む「等身大」の話が、なんとなく少ない気がしていて*1。本に興味を持った中学生とか高校生が、こういうところの本に辿り着いてくれていればいいな、とぼんやり思った。←なんか嫌な感想かしら…ごめん…。



個人的には書き下ろしの「You can keep it.」の主人公が、大変微笑ましくて、読みながらきゅんきゅんしてしまったよ。You can keep it. 「君にあげるよ」って、こういうの、あるよねぇ。もう本当かわいい。
今度、「蹴りたい背中」とかも読んでみようと思った。これから何を見て、どういう作品を書いていくのか、今後がすごく楽しみな作家さんだね。

*1:所謂少女・少年小説とかのレーベルが、尽くファンタジー世界のキャラクタ小説に埋め尽くされて、そうした「等身大」の話は、その居場所を追いやられてしまっていると思う