三島由紀夫「金閣寺」

しばらく時間をかけて、これを熟読していました。

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

ちなみに、どれくらい熟読だったかというと。必ず辞書を脇に携え、少しでも引っかかる単語があったら速攻で調べて意味を確認し、基本は一行につき即三回再読、くらいの勢い。そりゃもう、読み終わるまで、大変時間がかかりました。…。
でもその分、以前に読んだ時よりは随分、一つ一つの文章の息遣いみたいなものには触れられたかなと思います。こうした読み方はいわば枝葉末節ばかりに注視して、「葉を見て、幹を見ず」だとは思うのですが。今回はちょっとそうなることも了解した上で、一文一文がどういう風になっているかを読みたかったのです。
そうして読んでみて判ることは、本当に繊細で多様な表現で緻密に組み上げられた小説なんだということ。三島を掴まえて今更という感じですが、改めて、そうなんだなと思えました。うん、一文一文に唸ることしか出来ないというような感じでしたよ。どれだけの語彙があったら、あんな文章が書けるんだろう。比喩とか本当凄いよ…。最後に向かってパズルのピースが一つ一つかみ合って行くような感じがあって、それがいっそ怖いくらいなんだよね。以上でも以下でもないものが、嵌ってくる。伏線として張られているエピソードの拾い方なんか、奇麗に整いすぎて、穿った読み方をすると計算高すぎて、それがかえって嫌だという人もいるのじゃないかしらとすら思った…。
次も三島なら「花ざかりの森/憂国」辺りを再読しようかな。