勝つ為の布石、あるいはヒールの横顔。

今回は上記エントリにご紹介した関連記事から、「勝手に読み解く横浜清水戦」というような雑文をお送りします。
私は今節、中継すら見られないので、データや各所に上がったレポートなどを読ませて頂いたところから、試合を想像する他ありません。やっと入替戦も完全回避だろう勝ち点を積み上げたのに、折角連勝したのに、祝賀ムード?に乗り切れなかった為、段々寂しくなりまして。私、無駄な長文など上げてみることにいたしました。
という訳で、もう超推理。
超こじつけ。
超あてずっぽう(笑)。
サッカー素人が、どれだけ「それらしく」まとめるか。頭の悪さを滲ませないことが、どれだけ可能か(笑)。その点にポイントを絞ったエントリになっています。信じたら負けです。洒落と受け流せない方には、お薦めいたしません*1



さて、そんなこんなでリーグも残すところ5試合。今節は対清水戦です。
ゲームデータから、清水にポゼッションを譲っていることが、一つ試合内容を象徴するデータに思えました。

いまのF・マリノスは中盤から前の選手の体調があまりよくないので、どうしてもカウンターからでないといい形がつくれない。(試合後、監督コメントより)

恐らく今季は一年を通して、こういう事情が大きく影響しているのでしょう。ポゼッションが上回っていても、効果的に相手を崩すことが出来なかったり、あるいはパスミスなどが出て、味方同士で効果的なボール回しが出来なかったりする。結果、ポゼッションで上回っても、内容が(あるいは結果が)伴わない。
そういう状況にあっての、清水戦での勝利。「ポゼッションの低さ」は寧ろ、強引ながら敢えてこう読み替えたい。「勝つ為の布石」と。また随分大仰なとお思いの方もおられるかもしれませんが、しかし敢えて申し上げるならば、やはりそうなのです。あるいは、こう言い換えてもいい。



――マリノスらしさを取り戻す為の布石」、と。



布石です。そうでなければ何なのか。「単純に向こうの勢いにつけ込まれただけだろ」などと思ってはいけない。仮にも二年連続王者たるマリノスというチーム、そしてそのチームを応援する立場の者として、うっかり「単純に」などと、軽々しく仰ってはいけません。実際本当にそうだったとしても、ここは一つ、それらしく体裁をつけて考えてみようではありませんか。なにしろ、折角久しぶりの連勝ですから、満喫しない手はありません。



では、そもそも「マリノスらしさ」とは何なのか。



それは「しぶとく守って勝ち点3奪取」。これです。勿論これは、あくまで私の考える「現在のマリノスらしさ」であって、他の方には他の方の「マリノスらしさ」があると思います。もっと王者らしい「マリノスらしさ」を考える方は多いと思います。ただ、そういうことは、それぞれで構わないと考えておりますので、ここでは現在の私が考える「マリノスらしさ」にのみ言及します。
では手始めに。何故に「ポゼッションの低さ」が「マリノスらしさ=しぶとく守って勝ち点3」に繋がるかというと。
今季、横浜はデータ上、ポゼッションが上回った試合は、案外勝率が良くない気がするんです。必ずしも全ての試合に言えることではないと思いますが、今季、横浜はポゼッションが上回る試合は分が悪い、という印象がある。逆に今回のように、ポゼッションを譲るような試合の方が、案外辛勝していたり、ドローという結果であっても、内容に不満が少なかったりするように思います。
ポゼッションが高ければ勝てるというものではないけれど、ポゼッションは高い方が主体的に試合を進められる時間も多いということだから、試合内容を推察する目安にはなりますよね。ということはこの試合、相手に主導権を渡してしまっても、我慢の時間を過ごし、粘って粘って最終的には決める選手が決めるべき時に決めて、勝ち点をもぎ取ったということです。
監督は、「きょうの我々は運が良かったと思っている」というコメントを残しておられます。確かにそうだったようです。与えてしまったPKが成功していたら、勝てなかったかもしれない。運は大きく横浜を味方したのでしょう。でもこれまでを振り返ってみると、運が離れていた時期も随分長くありました。とすれば清水戦では、「運を引き寄せられた」ということが言えるでしょう*2。ここはそれもポジティブに考えたい。運を引き寄せられたということは、チームは「守りきろうと思って守りきれるだけの状態になった」と解釈をしてもいいように思います。

即ち。ここに来てやっと、そういうマリノスの得意としてきた「しぶとさ」が戻って来たということ。

今節、ポゼッションも低く、内容的にも決して素晴らしいところばかりではなかった(らしい)試合だからこそ、それが確かめられたとも、言えるのではないかと思うのです。
怪我人がいようと、チーム全体がちぐはぐであろうと、日程が厳しくて疲労困憊であろうと。それでもそうした様々な要因を跳ね除けられた時期が、確かにあった。大量得点をかっさらって勝つのではない、打ち合うよりはひたすら凌いで、相手のほんの僅かな間隙を突いた一点で勝利する。横浜の勝ち方は、そうした勝ち方でした。そういう意味で、横浜は「ヒーロー」のような勝ち方をしてはこなかった(これなかった)。



そう、横浜というチームには、「ヒール」の横顔があるのです。



ヒールになりたいか、なりたくないかは、この際おくとして*3。極端な言い方かもしれませんが、私はそう思います。横浜には「ヒール」の横顔が存在する。勿論、これはチームをけなして言うのではない。そういう勝ち方が出来るということを評価しているし、そういう勝ち方をする横浜を、私は愛しています。だからこんな長文を書いているのです。
シュートを打たせるだけ打たせて*4、「勝てる!」と思わせたに違いない分、相手チームからすれば、「試合の内容は申し分なかったのに、勝ち逃げされた」と思うことでしょう。決して悪くなかった、寧ろ自分達は確実に「良いサッカー」をしたのに、にも関わらず勝てなかった。相手チームは試合後に思うでしょう。「横浜、タチ悪いよ」。
そんな気持ちを抱かせる勝ち方をするチームを、ヒールと呼ばずに何と呼ぶのか。そして、こんな小憎らしい勝ち方を出来るチームが、他に幾つあるのかと。そう考えてみるのです。
そんなチームは、決して多くはないはずです。それだけの「しぶとい勝ち方」をする為には、運以上に、それなりの地力が必要です。「ヒール」には「ヒール」である為の要素が、多く存在する。横浜は、「王者」になれるだけのポテンシャルを持っていると同時に、「ヒール」になれる要素もまた持っている。

当然、「ヒール」たらんとすることが、チームの最優先事項ではなかったでしょう。王者は王者らしく、堂々と、爽快感のある勝ち方をしていきたかったはずです。そう出来る状況が整っているならば、王者らしさをまっとうするに越したことはない。ただそれを望める状況になかった今季、横浜にはもう優勝の可能性はない。けれどまだ、重要な仕事は残っています。
それは、残り試合、「ヒール」として、リーグを撹乱すること。



この雑文の冒頭。30節清水戦の辛勝ぶりをして、「マリノスらしさを取り戻す為の布石」だったと、私は申し上げました。
これまで、順位的にはさほど切迫した位置ではなくとも、勝ち点に差のない中位グループの中にいて、ただ闇雲に一節、一節を戦って来たと思います。残留争いに巻き込まれる可能性も皆無ではない、はっきりしない不安と、あまり調子の上がらない状況に挟まれ、目に見えて評価に値する結果をなかなかもぎ取れなくて、とにかく足掻いていたと思う。しかし先日の東京V戦でまずは立ち直るきっかけとしての勝利をし、天皇杯を順当に勝ち上がり、そして今節。久しぶりの連勝は、入れ替え戦の可能性を殆ど完全に消滅させてくれました。
もう変なプレッシャーも不安も、感じなくていい。そんな今だからこそ、私は横浜というチームに、「ヒール」という存在を自任して頂きたいのです。なんと言っても元王者ですから。万一にも残留回避などと、安穏と気を抜かれては困ります*5
あの「しぶとさ」が戻って来た。それは即ち、マリノスが「ヒール」の横顔を見せる、まさにその「前触れ」ではないのか。今節の清水戦の辛勝を、そう解釈するのも面白いのではないか。



「連続優勝はならなかった。でも、ただ負け通しでは済ませないよ?」



あの辛勝こそが、残り試合への明確な意思表明。反撃の狼煙。
勝ちへの飽くなき執念を、決して凹まぬプライドを、リーグを見守る全ての人につきつけてみせて頂きたい。そして誰よりもマリノスを応援する我々に、見せ付けて欲しいと思います。「ヒール」という存在になることは、王者であったチームとしてのタスクのはずです。
もう、その心意気を、意地を思うだけで、1週間は試合が瞼に思い描けるような。思い出せば満足が胸に広がるような。そんな強い意思を示してもらえたら。そうしたらたとえ、優勝だとか、目に見える結果が残らなかったとしても、真摯に戦おうとする貴方達の雄姿は、きっと心に残ります。


最後まで徹底的に「マリノスらしく」あることを、
願わくばどうか魅了されるようなサッカーをと、密かに願ってみるのです。

*1:それはいつものことですか、そうですか

*2:勝負事を語るのに、運とは何事かと思われるかもしれませんが、しかし運は少なからず――場合によっては、かなり大きな影響を試合に与えうるものです。

*3:大変強引に進めていきます

*4:勿論好きに打たせてはいけないし、そうしないように守備陣は奮闘するので、言葉の綾です。

*5:そんなことはないと信じておりますけれどもね!