江國香織「つめたいよるに」。
- 作者: 江國香織
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/05/29
- メディア: 文庫
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短編集だったこともあって、読みやすくてすいすい読了。どの作品にも通じているのは、優しい、柔らかい空気感。大事な誰かが、綿で優しく包んで大切に隠しているものを、そっと見せてくれた時とか、きっとこんな感じじゃないかしら。どこにでもあって、恐らく誰もが当たり前に向き合っているものを、平易な言葉で差し出されるような感じは、児童文学とか絵本を読んでいる時にも似た印象があった。あったかくて、ちょっとくすぐったくて、でもふんわり居心地の悪さも覚えたりするような、不思議な感じが面白かった。
近頃は、重くてどっしりしていて、湿り気を帯びて纏わりつくような感じの本をばかり読んでいた(笑?)ところがあったので、最初はそのギャップに付いて行かずに目を白黒させたりしていましたが、読み進むうちに慣れました。
その、言葉の「すんなり、一つも引っかかることなく体に入って来る」感じが、すごく新鮮だった。「浸透が早い」という感じ。「乾いた砂が水を吸い込むように」とかって、よく言いますけど、その感じに少し近いのではないかと思います(でも微妙に違う)。「平易な文章であること」によって生まれる特性かなぁ。ひらがなの比率が高い文章だったから、そういう風に読めたのか、それとも短編集だったからそういう印象になったのか。
そのうち他の作品も読んで確かめてみるのも楽しいかな。
「デューク」と「ねぎを刻む」とかが好きだったかな。