舞城王太郎「世界は密室でできている。」

世界は密室でできている。 (講談社文庫)

世界は密室でできている。 (講談社文庫)

昨日はこれを読んでいて、途中で部屋の電気も付けたまま、気付けば眠ってしまっていました。…お前いつまで学生気分だよ、みたいな寝落ちっぷりです。あはん★



はてさて、そんなこんなで舞城王太郎、「世界は密室でできている。」でございます。
舞城的青春小説。主人公の作中年齢が中学生〜高校生に設定されていることもあって、全体に他の舞城作品以上にポップな印象。暴力その他の、舞城の特色とも言える「ある種のエグい描写」も含みつつ、グロテスクになりすぎない程度に仕上げられている。読者を突き放さない、読みやすくまとまっている一冊と言って差し支えないだろう。
講談社ノベルスの記念刊行である「密室本」の一冊だったようで、作中に幾つかの「密室」が散りばめられているが、個人的には密室とか推理といったところよりは、主人公とその友人ルンババ12といった未成年の登場人物達の「成長物語」の側面が強く印象に残って面白かった。元々そういったジュブナイル系の色合いの作品が好きなんです。

舞城作品の中にある「泣き」のシーン等で出てくる強い感情とか、それに伴う台詞とか。普通の作品でああまで書き尽くしてしまうと、場合によっては「鬱陶しい」と引かれるくらい直球なのだけど、舞城は、あの圧倒的な文圧で、そうした部分を軽やかに超越していくところがあって、個人的にその点が毎回、非常に興味深いと思っている。
正直なところ、私は暴力とかグロテスクな表現が苦手なのだが、それでも舞城なら読んでみようと思うのは、そこに「大きなラブ」が書ききられている、からなんだよね。親でも兄弟でも友達でも、人間関係から生まれる、強いからこそ醜いものを伴った感情を、最終的には力技で捻じ伏せて前進していく結末が見たいからなんだ。
こういうのを「圧倒的カタルシス」とかって言うのだろうけど。カタルシスとかって言葉じゃ、個人的には置換不可でございます。一言で言い切りたくないし、言い切られたくない何かを感じるんだと思う。それが一体なんなのか、確かめたくて、暴力シーンに顔を顰めながら読み進んでしまうのであった(苦笑)。

ミステリ全般に殆ど手を付けなくなった今でも、この人の作品にだけは、ちょっと興味があるんだよな。やっぱり面白いんだろうな。←素直にそう言いなよという話。



ところで、この作品に登場するルンババ12って、奈津川家サーガの「煙か〜」か「土の中〜」の辺りに一瞬出てくるルンババさんと同一人物? どっちに出て来ていたかも確かめられない、現在のわたくし。すんません。