星の王子さま

星の王子さま (集英社文庫)

星の王子さま (集英社文庫)

岩波書店が独占していた翻訳権の期限終了を受けて、発行された新訳版。新訳の中では、倉橋由美子訳になんとなく興味をもっていたのだが、池澤夏樹訳が文庫でも発行されていたのを発見して読んでみましたよ。ちなみに私は、岩波版の記憶が殆どないので、読み比べ系の感想は一言もありません。寧ろ感想自体、大したものをまとめるつもりもないので、どうぞよろしく(酷いよ!)。

というか、私は星の王子さまの記憶がなかったんですよ。
昔、家に確かに「星の王子さま」の本があったんです。何度も挑戦した記憶もあるのですが、内容の記憶はまるでない…。字が読めるようになったほんの小さい頃から、何度も挑戦はしたんです。多分小学校に入る前くらいから、ぱらぱら絵本のようにめくっては、拾える文字だけ拾おうとしてみたり。通読も、少なく見積もって5回はしたと思う。最後に挑戦したのは小学校の3・4年生だったのかなぁ。でも、内容の記憶がまるで残っていないのです。……。
私にとって星の王子さまという本は、世界的にメジャーな本でありながら、「何度読んでも、記憶に残らなかった本」。更に言うと、何度読んでも記憶に残らないということは、多分私にとって「最初に挫折した本」だったではないか、と。寧ろ読まず(いや読んだはずだが)嫌いな印象のある本だったのです。

が、読んだら、全然おもしろかったですよ。というか、かわいらしかった。もっと「鼻につく」内容に感じられるのではと勝手に想像を巡らせていたけど、そんなこともなかった。最後のシーンなど、普通に感動してしまいました。
でもなんというか、シンプルすぎて、かえって読みようは沢山あるというか。だからかえって難しく考えてしまって、面白かったという感想と同時に、「よく判ってないかも」という印象も残りました。池澤版のあとがきには、「詩を一度読んだだけで理解したとはいえないように、この本の中身もまたそうだ」という主旨の一文があって、そうした印象には納得もした。
王子さまが一体どんな人だったのか、なんだったのか。そんなことは多分、この本にはどうでもいいことなんだろうな。ただ、そこに何を見出すのか。漠然とでも、何かを感じることが出来れば、その人にとってこのお話に意味があったということなんだろう。
キツネの言う「大事なものは目では見えない」という言葉が、このお話に根幹を表す一文なのかもしれませんが、個人的には王子さまに出会ったキツネの言葉が、印象に残りました。

「僕を飼い慣らして」

その後のキツネの告白も赤裸々過ぎるほどで、この年の人間には随分堪えるものがありましたよ…。ああ、キツネかわいいな。泣ける…。
期待以上に*1、大変面白かったです。また読み直そう。

*1:というか、正直まるで期待していなかったので…