basso「クマとインテリ」

クマとインテリ (EDGE COMIX)

クマとインテリ (EDGE COMIX)

 インテリさんが好きです。でもクマさんはもっと好きです(松本引●越しセンター風)。
 という訳で、「クマとインテリ」。basso というのは、一部の人には言うまでもなく、オノナツメの別名。いわゆるそういう内容の短編集です。そういう内容ってなんだろうと思われた方、どうぞそのままの君でいてください。

「『イタリア男、スーツ、眼鏡』がテーマの小粋なCOMIC」らしいです(コミックス裏表紙からまんま引用)。確かにまるまる一冊、イタリア男がスーツで眼鏡なコミックスでした。スーツ眼鏡大好物な人には堪らないだろう一冊。
 でも個人的にはスーツとか眼鏡とかいった属性的な要素は、この作品集にはあまり重要ではなかったと思う。これは肯定的な意味で。スーツがなくても、眼鏡がなくても、この作品はそれぞれ作品としての筋があり、きちんと成立していました。一冊のコミックスとして纏めるにあたって、キャッチとしてテーマを後付けしたのかなー。

 絵柄が大変特徴的な作者ですが、その絵柄の印象に反して?、非常に内容がかわいらしいのが特徴のような気がします。と、大して作品を読んでいないのにえらそうですが、まあ、印象として。モノローグ等の言葉を出来る限り廃して、比較的淡々と対象を描いているのだけど、決して作品はドライではない、という感じ。作中で流れている空気はとても優しいし、情感を感じられるもので、ストーリーの骨子だけ取り出すと、寧ろかなり甘い仕上がりの作品が多い。かわいくて、優しくて、時に愚かで、だから人間的。そういう登場人物達の淡い心の交流を優しい目で見守って描いている。作者の視点の暖かさを感じる作品集。全体にあっさりしてべたべたした感じもなく、読みやすい内容です。
 どのお話もかわいらしくて楽しかったですが。敢えて選ぶとすれば、やはり表題作が一番好きかな。ページ数が多い分、他の作品より多少突っ込んだ感じの描き方になっている感じがする。あとクマがかわゆらしいからです(単純)。

マニフェスト」という短編の、色々あってうっかり大の男が泣くシーンで、涙だけでなく鼻水まで描いているのと、「シーガロ」という短編の登場人物がスキンヘッドなのが、女性の作家にはちょっと珍しいかなと、作品の内容とは別に印象に残りました。女性の作家で鼻水まで描いたり、スキンヘッドに対する抵抗感のない人って少ない気がするんですよ。そういうのが地味にかなり好感。