オノ・ナツメ「リストランテ・パラディーゾ」

リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)

リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)

 「老眼鏡紳士」であることが雇用条件の一つになっているリストランテを舞台にした作品。その店を訪れた一人の若い女性を主人公に、非常に抑制の効いた作風で、人間模様や大人の恋を淡々と物語る秀作。

 久しぶりに、本当に久しぶりに、読んだことのない作家の本(漫画)を買いました。オノ・ナツメは、ずっと前から気にはなっていたのだけど、なんとなくキッカケがないまま手に取らずにいたのですが。今の今まで、「どうしようかなー」と思っていた自分、負けわんこ決定、と思いました。あー面白かった。久々に素敵な作家の素敵な漫画に巡り会ったなー。
 表紙の感じと、中身の絵柄にわりにギャップがあって。それが「どうしようかなー」と思っていた理由だったのですが、要らぬ心配でした。若い女性の主人公のモノローグが鬱陶しかったり嫌味になるようなこともなく、寧ろ出て来る女性キャラクタも、老眼鏡紳士達同様にとても魅力的で、登場人物達がそれぞれに大変好感を持てるキャラクタとして描かれている。
 登場人物の大半が大人(何しろ老眼鏡をかけているような人達がメインだからね)だということも手伝っているのだろうけど、作品中の人物達がそれぞれに人に対して一定の距離をおいて、且つそれが冷たくならない優しみをもった空気になって、作品内に流れています。
 「メガネ男子」であることが、一つのファッションになっている昨今の風潮もあり、この作品に掛けられている販促帯でも「老眼鏡紳士がおもてなし。」となっているのだけど。いい意味で、「メガネ萌え」を押し出したような描写はあまりなく、純粋に主人公の女性と母との関係や、オーナーとその義兄、また従業員と別れた妻といった大人の抱える問題をやさしい目線で追いかけている。人間ドラマに仕上がっているところが、私的に大変好印象、高評価です。この作品が大変面白かったことで、別名義の作品も含め、読んでみようという気持ちになれました。満足まんぞく。



 ところで。この作品、巻数の表示がないのだけど、まさかこれで終わりじゃないよね? という予想通り(笑)。コミックス最終ページの、掲載紙だったマンガ・エロティクスfの宣伝ページをよく見たところ

オノ・ナツメ新連載 リスパラ番外編シリーズはvol.41(9/7発売予定)からスタート予定」

 と書いてありました。そりゃそうだろう、という感じ。これだけ魅力的な人物がいて、描こうと思えば沢山のアプローチの仕方がある作品。このまま終わるなんて勿体無いよね。そこそこ人気も出ているようなので*1、今後に期待したいものです。

*1:一刷目の部数が少なかったのかもしれないけれど、6月に一刷目が出て、7月に三刷かかっている。じわじわ噂が噂を読んでいる状態なのだろう、おそらく。