第2節、鹿島戦。

 試合後、岡田さんは監督会見で「点差ほどの差はなかった」と仰ったようですが、私もそんな印象を受けました。たまたまこの試合は横浜に運が向いて、とんとんと得点を重ねられたという感じ。ただ、調子の悪い時には、不思議にそうした運すらも向いて来ないものですから*1、「運が向いている」ということは、つまりそれなりにチームの状態が上向いてシーズンを歩み始めたと言っていいのかもしれません。
 勝って兜の緒を締めよとはよく言ったものですが。アウェー鹿島に、3-0で勝利。手放しに勝利の余韻に酔いたくなる試合でした。どうでもいいけど、えらい長文になってしまいました…(いつも)(うん知ってる)。
→ゲームデータ【http://www.f-marinos.com/topteam/report/?code=1141994958



 開幕から二試合、4点3点と得点を重ねています。PSMを合わせれば11点です。昨年、特に得点を取れずに苦しんだ部分も大きいだけに、まさに順風満帆な滑り出しに思えます。私はこの2節鹿島戦は自宅で中継観戦でしたので、現地で見られた方とはまた違った印象を受けたところもあるのかもしれませんが、「あ、横浜、もしかして強いんじゃ…?」と思いました(笑)。
 もしかしても何も、03-04年とリーグを連覇したチームですし、あれだけのメンバーを揃えていて「強くない」としたら、それこそ大問題ですけども。でも、正直なところ、ここニ試合を見ての私の素直な感想は、「あ、横浜、もしかして強いんじゃ…?」でした。これについては後述します。



 さて。PSMは相手がJ2のチームでしたし、開幕戦は昇格して来た京都。侮って言うわけでは決してありませんが、しかしその二つの試合の出来がどれだけ華やかだったとしても、「この試合で今年の横浜を占うことは出来ない」という気持ちがどこかにありました。試合の内容云々を置いても、このニ試合を手放しに「快勝!」という風には喜べなかった。喜びたいのだけれど、その気持ちを手綱を引いて押さえていました。
 だからもし今年の「試金石」になる試合があるとすれば、それは2節の鹿島戦だと思っていた。

 結果は既にご存知のように、3-0で快勝となりました。これは嬉しかったなぁ。自宅で中継を見ていたのですが、キックオフから激しくプレスに行って、中盤を自由にさせない様子とか、どんどんパスを回して効果的な大きなサイドチェンジとか、本当に見ていてわくわくしました。メディア的には、代表FW「柳沢対久保」という構図を大々的に押し出したカードでしたが、この試合では両選手ともメディアの望むような目立った活躍というシーンはありませんでしたね。
 横浜の側からは、は特に最終ラインを中心に、鹿島の代表組の連係、彼等を中心としたパスワークを上手く押さえ込んで仕事をさせなかった。「横浜は守備のチーム」というメディア的な概念によく適った結果と、「王者」らしい得点を重ねられたかなと思います。素直じゃない言い方になってしまったけど、中継を見ていると、そんな見方を覚えてしまうものです。
 マグロンの2点が大きかった試合のように思います。昨年日本のサッカーに馴染めずに、随分苦しんでいた彼が、今年はフィットして水を得た魚のような生き生きとした活躍ぶり。彼の努力と共に、周囲が彼の良さを活かすことが出来るようになった部分もあるのだろうと思います。ボランチが点を取れるのはすごく大きい。
 左サイドの面白さは勿論ですが、そこに警戒が集中するからこそ、逆サイドへの大きな展開というのは生きてくる。この試合、個人的には吉田より、後半途中出場した隼磨が目を引きました。開幕戦もそうでしたが、とにかくアピールしようと必死な様子がよく伝わって来る。元々いつだって一生懸命、必死で戦ってくれる、気持ちの伝わる選手ではありますが、今年は本当に凄い。ポジション争いから生まれる闘争心って、対戦相手に対するそれより、時に激しく熱いのじゃないかしら…。今年は隼磨の気合が一味違う。
 今回の3点目など特にそうで、ああいう気持ちの入ったプレイが、試合を自分達の方へ引き寄せるんだなぁと思いました。隼磨、思いっ切り新井場ぶっちぎってたよ? ぶっちぎるって、ああいうのを言うんだね…(苦笑)。新井場、かなぐり捨てられてた…。映像的に、思わず 笑った。いや、あのシーンは見事。いっそ愉快だった。走る走る。きゅんきゅん走りますからね、隼磨。あの時間帯に隼磨が出て来たら、相手は嫌だろな。「現日本代表より持久力がある」んだから。マークに付く方からしたら堪らないだろうと思う。
 鹿島戦のあの様子など見るにつけ、隼磨先発も見たいなぁという気持ちもあるのですが、今のオーダーで結果がきちんと付いて来ているし、特に問題がないところを考えると、なかなか難しいところもあるのかな。色々問題がない訳ではないと思うんですが、問題点は修正して行ってくれるんじゃないかと思うんですね。
 ただ一点、気になっている点というか、欲をいうとすれば、もうちょっとチーム全体が若返っていければいいなということ。今先発している選手の誰もが選手として円熟期に入っている選手ばかりで、平均年齢がわりに高いんじゃないかと思うんですよね。一番若いのが勇蔵。彼のセンター起用には、選手として経験を積ませる為の抜擢という部分も、少なからずあるのじゃないかと思うんです。彼のように、もっと「割り込んでくる若手」が、いて欲しいという気持ちはあります。鹿島戦でベンチ落ちした那須など特に、今頃すごく発奮してると思うのですけど。早くも「磐石」の感も出てきた現先発メンバーに、是非とも若手が割って入って来て欲しい。…左サイドのトライアングルは元より良治さんも相当効いてるし、割って入ってくるのはかなりのことですが、一人でも二人でも多く、名乗りを上げて来て欲しいなと思います。坂田もオオシも、ベンチを温めているには勿体無い! 岡田監督にも、積極的に交代で使ってくれることを願うばかりです。






 ところで。話は変わって、「あ、横浜、もしかして強いんじゃ…?」の話(苦笑)。
 これね、冗談でもなんでもなく、本当にそう思ったのです。ということは、私の目には結構長いこと、「横浜は強い」チームだという風に、映っていなかったんだなと、なんとなくはっとした。その話です。



 昨年も、恐らく今年もそうだと思いますが、横浜は、外からは「王者」とか「強豪」というような見られ方があって、常に優勝候補に名前の挙げられるチームだと思います。優勝候補に名前が挙げられなければ、それこそ「横浜の名が廃る」というような矜持が、チームにもチームを応援する側にも、きっとある。勝っていても負けていても、調子の良い時は勿論のこととして負けがこんでいる時にも、横浜というチームを見る目は、常に「そういう目」なのです。
 でも、昨年辺り、私にはそれにすごく違和感を覚えていたのです。こういう言い方はあまり良くないかもしれませんが、「そんなに強いチームでもないよ」と思っていた。あまりにも苦しんでいたイメージが強すぎて、「マリノスは外から強いチーム、優勝候補というように言われるけど、実際そんなに強いのか?」みたいな気持ちになることがあったのです。いえ、そのポテンシャルを充分に生かせれば「強い」チームであることは判っています*2。でも昨年は「ポテンシャルを充分に生かせる」状態に、あまりにも遠かった。言い訳と取られるかもしれないけれど、昨年横浜を取り囲む状況は、事実としてそうでした。

 勝ちを重ねることは、そんなに簡単ではない。けれど、それまでの実績やチームのメンバーから見て無条件に「強い」という言葉が使われる。それは最早当たり前で、当たり前のこととして受け止めていく・受け止めていかねばならないチーム、それが横浜というチームなのでしょう。頭では判っているのですが、私の感覚とはちょっとズレがありました。
 昨年、すっきり勝った試合を幾つ見ただろうかと思います。すっきり勝たなくても、勝った試合を、幾つ見れただろうか。あるいは、試合の結果を脇に置いても「面白かった!」と手放しに思える試合があっただろうか。私はあまり多く思い出すことが出来ません。寧ろ、苦しい試合、苦しい展開を、じりじりとした気持ちで見ていた記憶しかない。だから、「横浜=強い」という世間一般の認識が、私の中からどんどん欠落してしまった。私の「横浜は強い」という言葉は、どこかで世間一般のそれとズレていたように思うのです。

 具体的には、「横浜は強い――といいな」とか、「横浜は――やれば出来る子」とか(笑)。積み上げた試合の成績という事実をもって「強い」というところから離れて、私は昨年の横浜というチームに、『「横浜は強い」という既成の概念に、自らを懸命に律して近付けていく姿』を見ていたのだなと思います。



 横浜は外からの目があるからこそ、選手やチームそのものが自らに、強く、「常勝チームであるべき」だと高いハードルを課している*3。チームが「強いてそうあろうとしている」というところばかり感じてしまっていた私には、昨年の成績を見て「強くない」という結果だったということ以上に、やっぱり昨年の横浜は、決して「強い」チームには映っていなかった。

 だからPSMを含めた直近の三試合。どれも3点4点と取って、結果としては「快勝」をしている現在のチームを見て、「あ、横浜、もしかして強いんじゃ…?」と、新鮮な喜びを感じられたのです。…「もしかして」じゃないよ、それくらいのメンバーななし、当然のようにやってくれないとさ、とも思ったりもするのですが…。



 ともあれ、それくらい今年の横浜が昨年と違う「勢い」を感じさせて、ここ三試合を戦ってくれているということが、改めてすごく嬉しい。にやにやしたくなります(笑)。「横浜強い!」と思えることの喜び。これを勝る幸せもそうそうないでしょう。見ていてわくわくする、今年の「横浜」がそんなチームであることを、改めて噛み締めたりしています。

*1:調子が悪いから運が向かないのか、運が向いてこないから調子が悪いというのか、にわとりと卵みたいな話ですが

*2:あ、これ他のチームを応援していらっしゃる方には、凄い高飛車な物言いに聞こえるかしら。すみません…一応言葉の綾として…。

*3:クリア出来ない、無理な目標だとは決して思いませんけれども