くるり「NIKKI」

NIKKI(初回限定盤DVD付)

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 昨年末に発売された「赤い電車」「superstar」などのシングルカットを含む、くるり、6枚目のアルバム「NIKKI」。

 アマゾンの批評?をちょっと見たら、思った以上に評価の低い意見が多かった。まあWEBにあがる批評なんてものは、往々にして「すごく好き」か「すごく嫌い」のどちらかしかないものだけど。
 デヴュー当時のロック全開のサウンドを期待すれば、このアルバムは期待からやや外れているだろうと思うし、何がしかのマニアックさへの希求を期待して聴いた人にとっても、やはりちょっと違う一枚になっているなとは思った。くるりは、――というか多分岸田くんは、自分の音を追及して表現するという才能と同時に、色んなものに対しての適応力があって、実験的に色々なことに手を伸ばしていくのだろうなと思う。
 一つのものを突き詰めるという作業よりは、新しいもの、「おもしろい」と感じられるものを取り込む作業に対しての感性と余裕があって、それがくるりの魅力なんだろう。ただその魅力こそが、その時々でくるりの志向する音楽性を変えているようにみせ、一枚ごとに評価が割れ(ている気がす)る理由なのではないかなと思った。
 ただどんなに音楽が変化したように思えても、根底に流れるメロディラインの美しさやポップさ、岸田くんの生み出してくる言葉の本質は常に一定している。そこに惑わされなければ、くるりを「楽しめる」と、私は思っている。

 個人的には今回の「NIKKI」は、「一周回って、元に戻ってきつつある」と思った一枚。
大きく振れた針が、どんなに果てしなく遠くに離れたように見えても、やがて元の中心を指す位置に戻って来るのと同じことが、なんとなく今回のアルバムに感じられたように思う。くるりって、細分化されたロックのカテゴリの中にあって、近頃珍しく「オールラウンド」という印象があって、比較的リスナーを選ばないバンドという部分があると思うのだけど、そうした中で「誰にも広く受け入れられるくるり」から、「誰かにより深く受け入れられるくるり」でありたいという願望みたいなものがあって。そうした時々の感情の起伏の通りに、くるりの音楽性という針は大きく振れてきた。で、今回のアルバムはいい意味で、そうした針の振幅の色々な状態の音が、散りばめられているような気がした。
 気がしただけだけど(笑)。

 針が浅く、中心に近い位置で小さく小刻みに振れている曲。あるいは針が大きく深く、中心からは遠く離れてゆっくりと振れている時の曲。どちらもあって、どれもいい。どっかで聞いた言い回しで敢えて纏めるのは、使い古されたことにこそ、案外真実がひそんでいるからだよ、とかもっともらしいことを言ってみるのも、その時々の気分だから。くるりって、そういう風になんだかんだでずっと、私の傍で鳴っている気がする。



 ――と、敢えてまとまりのつかない文章で語って、照れ隠してみるのであった(笑)。
 私は今回も、すごく好きです。どの曲も、つい口ずさんじゃうよ。