第31節、広島戦。

久しぶりのリーグ三連勝。古巣相手に全得点に絡む久保の活躍で、J1残留も確定。
岡田監督も「今日の3点は全部、久保個人の力」と手放しの絶賛コメント。

松田:今のマリノスは誰が出ても強いチーム。遅いけれど、いかにマリノスというチームが強いかを見せ付けたい。今シーズンはACLもあったが、いかにチームの全員が元気でいられることが大切か、わかった。
選手コメントよりhttp://www.jsgoal.jp/club/2005-11/00026365.html

ゲームデータ:http://www.so-net.ne.jp/f-marinos/sokuhou/cgi-bin/view.cgi?id=10000289
ゲームレポート:http://www.jsgoal.jp/club/2005-11/00026388.html



広島は守備の要、ジニーニョが出場停止で4バック。北京五輪世代の吉弘が先発するかなと、個人的に期待を含めて見に行ったところがあったのだけど、残念ながらベンチでした。
さて横浜は中澤が事前の情報通り、特別休暇的に今節は欠場。3バックは中西・松田・河合。ボランチは上野・マグロン。久保とグラウの2トップでした。

序盤は広島ペース。横浜はスペースを使われてボールを回され、シュートを打たれるという展開。先制点は駒野のFK。壁のブラインドになったのか、あっさり先制点を献上。ボールの勢いは、止められない速度には見えなかったけど、哲也は完全に逆を突かれていたな…。早い時間帯だから過度の心配もなかったけど、失点でチーム全体のムードが悪くなってしまうと、点が取れない現状では厳しい試合になるかもという予想は脳裏を過ぎった。
もっともそんな危惧は杞憂に終わってくれた。隼磨から放たれたクロスに、久保がヘッド一閃。ニアをケアするGKの読みを裏切るファーへの叩き込みで、あっさり試合をふりだしに戻す*1
この得点より前だっただろうか、当初ボランチの位置にいたマグロンが積極的に前目に上がっているなと思ったら、どうやら岡田さんからそういう指示が出ていた模様。良治さんをアンカー的に残して、鮪を前に上げる修正が効いて、横浜はペースを取り戻す。マグロンはチーム全体のスピードと少し合っていないなと感じることもあるんだけど、それを前提にしても、やっぱり彼のキープや展開力は頭抜けている。今回の試合では特に、ブラジル人トリオのパス回しは、見ていて小気味がいいくらいだった。

逆転の機会は、久保のヘッドから程なく訪れる。久保の滞空時間の長い一点目の威力か、浮き足立った感のある広島の隙を突くように、相手のミスを久保が拾って、ゴール前のグラウへ。これがあっさり決まって二分で逆転に成功。三点目は山瀬のスルーパスから、久保が倒されてPK。こちらもグラウが落ち着いて決めて、3-1で前半を折り返す。
後半はどちらにも得点はなかったものの、横浜は松田を中心に安定した守備を見せ、相手にシュートを一本も打たせることなく、がっちりと2点差で押さえ込んで終了。得点の機会は幾つもあったが、どれもバーに弾かれるなど、「惜しい!」どまりで追加点を奪うことは出来ず*2。この点は「ああ、最近の横浜って感じ」という印象を抱かせはしたが(苦笑)、ともあれ久しぶりの三連勝。この勝利でJ1残留も確定、久保の久保らしい活躍を改めて目の当たりにし、気持ちよく、嬉しい勝ち点3となった。
またこの試合は、全体の調子の良さが背を押したのか、両サイドも生き生きして見えた。上に書いた通り、ドゥトラを交えてのブラジル人トリオの絡みは見ものだったし、隼磨も上下動する運動量は勿論として、一点目の久保へのクロスの精度も冴え渡っていた。チームとしても、サイドチェンジのタイミングなんかもよくて、本当に試合を見ていて面白かったなぁ。



さて、今週の私的キーワードは「あっさり」。これです。
点が入る時、勝利する時、調子のいい時は、不思議に「あっさり」しているもの。久保の得点から二点目までなど、特にそう思ったのですが。粘って粘って、なんていう展開もなく、そういう風が吹いて、運が手元に転がり込むみたいに、得点が決まっていた。
近頃、やっと調子を取り戻しつつあるチームに、なにか大きな変化があった訳ではないと思う。システムも変わっていない。そもそもそうした部分では敢えて具体的に変えるより、痺れを切らさずに現在のやり方を推し進めることを、選手達は実戦しているように、私には思えていた。だから「変わったこと」といえば、久保が満を持して復帰したということだけだ。でもそれが、こんなにも「あっさり」、チームにいいムードを呼び込むのかと。感心するやら、あっけなさすら感じるやら、文句ない勝ち点3の前に、私はちょっとぼんやりと試合の行方を見守っていました。

久保の得点は、いつもどこかあっけない。以前にも似たようなことを書いた気がするけど、ごりごりと力で捻じ込むというよりは、ポーンと上がって来るクロスにひらりと飛んで、さくっとゴールネットを刺している。無造作というか、なんというか。そこに駆け引きなど、まるで必要ないというように、いかにも久保らしく、不言実行とばかり、ぽんと決めてしまう。
それが久保という日本人離れしたFWの特異な才能なのでしょう。彼がボールを持つと、何かが起きる。そう信じられる気がするから、選手皆が前を向いて、久保を見る。久保にボールを出す。ピッチに立っている時、久保の纏う求心力は本当に絶大なものなんだと、改めて思って見ていました。
文字通り、全然違う。久保のいる現在と、久保のいなかった今までとでは、チームが全く違うもののように見えるんだと思った。勿論、久保復帰にあわせるように、チームがどん底の状態を脱してきていたということも、大きく影響しているだろうし、今まで頑張ってきたFWの選手に「何かが起きる」という期待を抱かなかった訳じゃない。坂田や大島、清水、それぞれに特徴と持ち味があって、期待も可能性も覚えてはきたけれど。久保のそれだけは、明らかに「規格外」。「居る」と「居ない」でこれだけ違う、影響力の大きな選手も多くないだろう。
決定力不足を嘆かれて久しい日本代表への招集も遠くない…かな。ジーコじゃなくても呼んでみたくなる、破格の出来でしたよ。日本代表に必要なもの、イレギュラーな存在。
まあ代表に限ったことではありませんが、何がしかの「イレギュラー」さというのは、一つ大きな才能で、なによりの武器なんだね。日本はお国柄か、イレギュラーな選手は育ち難い土壌ではありますが。久保みたいな選手が沢山育ったら、日本のサッカーはきっとますます面白くなるだろうな、なんて夢想してみるのでした。

*1:やべっちFCでは、この久保の一点目が「今週の巧」になっていたよ。確かにあの体勢からファーへ強く叩きこめるのは凄い…

*2:那須!惜しかった!惜しかったよ!