中上健次「枯木灘」

枯木灘 (河出文庫 102A)

枯木灘 (河出文庫 102A)


わー各種やるべきことが、なんにも進んでなーい。にも関わらず、本日ももっそい勢いで本を貪り読むわたくし。しかし「海辺のカフカ・上巻*1」を読み終えたはいいが、気付けば下巻を買わないまま、徐に中上健次の「枯木灘」の再読を始めております。ああ、幸せ。

枯木灘」、正直初読の時より、断然響くんで吃驚した。目から鱗が落ちまくっております。初読の時、全然読み込めてなかったんだな…。まあ何事も、特に読書などというものはタイミングですから、いい頃合で再読を始めたということなのでしょう(都合のいい解釈)。
作品全体を通してある圧倒的な濃密さは、ここで特筆することもなかろうというほどの名作ですから、本当に今更ですけども。個人的に今回は、冒頭辺りの洋一*2に関する件りの細やかな描写に、意識を奪われております。
ああ、そう。子供ってそうなんだよねという繊細な描写と、そんな子供を傍で世話し、見守っている主人公の目線とか、何気ないやりようとかが、目に浮かんでくる。それがまた、当たり前みたいに、ぽーんと投げ出すみたいに出てくるから、本当に唸るしかない。
今度は色々なものを読み逃さないよう、一字一句をゆっくりと、一行一行舐めるように、一行に対して即読み直し三回! くらいの丁寧さで読み進んでおります。わー凄い! 本当に凄いな中上健次。再読楽しい!



ああ、そうそう。枯木灘といえばさ。河出文庫の装丁デザインが今月から一新されましたね。背表紙が黄色になって、表紙がつるつるとした感じになってしまった…。以前の、背表紙:白に作者名のところが紺(他の色もある)、表紙はマットな質感という装丁が、シック?で上品に思えて、大変素晴らしかったのに…!
正直、新しい装丁にがっかりしております…(;´Д`)。でも鷺沢萌の新刊が出たから、早々に新装丁本を買うの…。まあじきに慣れてしまうのでしょうが、しかし…。ああ、マットな質感表紙、カムバック。

*1:どうでもいいが、私はこの作品をどうしても「彼岸のカフカ」と間違えそうになる…何故…

*2:主人公の家に預けられている少年。養護施設で育ち、里親に引き取られるも、その親が離縁した為に、現在義父の親戚宅に居候中という設定