break through the right side

石川直宏、前十字靱帯損傷で今期絶望。
http://tochu.tokyo-np.co.jp/fctokyo/topics/topics_05092001.html

…今年はリーグ全体で、前十字靱帯の怪我が多くはないですか。日産で目撃したのも、これで二度目*1。どこの選手であれ、これ以上、怪我をするところは見たくないものです。
特に接触のないところで倒れて、担架で運び出されたのを見ていたので、時間のかかる怪我かもしれないということは、薄っすらと伝わりはしましたが。改めて昨日、公式からの発表を見て、正直溜め息が洩れました。海外移籍を断って、まさにこれから頑張り時というタイミングだけに、本人もショックは大きいだろうなぁ。選手が怪我をするのを目撃するのは、こちらもつらいですね。これから決して短くないリハビリ期間が待っていることを思うと、痛ましく思える。勿論これから一番つらく、苦しい時間を過ごすのは選手本人で、見ているこちらが感じる「つらさ」など、高々知れている訳だけれど。
この記事(http://www.nikkansports.com/ns/soccer/p-sc-tp0-050920-0006.html)に添えられた写真で、気丈な笑顔を浮かべているのが、上手く言えないけれど「ナオらしさ」とも感じられてしまいました。でも本当にまだ若いし、焦らずゆっくり治して、またFC東京の右サイドの驚異になって戻って来て欲しいものです。来年、また対戦する時に、元気な姿が見られるといいと、心から願っています。


私はサッカーを見始めてから日が浅くて。ちょうど見始めたタイミングと、アテネ五輪世代がチームを発足して予選を戦い始めた頃と、タイミングが被っているので、この世代には取り分け思い入れがあります。
これ以降、電波のような思い出話が始まりますので、ご注意ください(苦笑)。

私が初めて意識して「石川直宏」という選手を見たのは、2003年5月国立で行われた最初の五輪予選。あの試合は見るからに、チーム全体が緊張してガチガチになっていて、前半はぎくしゃくしっぱなしだった。ナオはその試合、確かスタメンで出場していて、いつもの右のサイドに入っていましたが、フリーで上がっていても、全然ボールが回って来なかった。ボールを呼び込む声は出していたのかもしれない。でも応援の大音響に掻き消されていたのか、途方にくれてでもいるように、私には終始困ってぼんやりして見えました。「もっと手を挙げたり、強くアピールすればいいのに」と、一緒に見ていた友人が何度も言っていました。「いつもFC東京の試合ではやっているのに」とも言っていたのをよく覚えている。
後半になると、やっと危機感に目が覚めたのか、選手達は必死に、でもいきいきと動き始め、松井の得点を皮切りに、嘉人、中山悟と得点を決めて、3-0で終了*2。二日後?に行われた二戦目ではすっかり吹っ切れたものと見えて、7-0?で大勝。ナオも珍しく頭で得点していたように思います。
後々、私は五輪代表の試合を見る度、そして今になっても、五輪世代の彼等を見ていると、ふとあの試合の一様に途惑ったような様子を思い出すことがあります。緊張していたんだなぁと、本当に思う。最初に意識をして見た試合があの日のあの試合だったので、私の中でアテネ五輪世代の彼等がその後どんどん成長していく様は、さながら手に取れるようで、見守るのがいつも嬉しかった。と同時に、こうして怪我など、彼等の思うように進めない息苦しさみたいなものを感じるのはつらいことです。
でも、きっとこのままでは終わらない。今は暗闇で手探りしていても、いつか必ず壁を乗り越えて進んで行ってくれるだろうと思うから、こちらも焦らず、じっと待っていようと思います。
ナオのコールにもなっているスカパラの曲「DOWN BEAT STOMP」の一節で、冷牟田さん*3が繰り返し飛ばしているアジの言葉が、このエントリタイトルの英文。

break through the right side,like a wild beast

まさにナオの為の言葉のようだと、改めて考えていました。また右サイドを駆け抜けるナオが見られる日を、ピッチを躍動する姿を見られるのを、信じて待っていようと思います。






ちなみに。
「DOWN BEAT STOMP」は、サッカー大好きスカパラさんが、日韓W杯開催を記念して自主的に「アンオフィシャルテーマソング」として製作された楽曲。そんなこんなで私の中では、上記曲の収録されたアルバム全体がなんとなくサッカーで、なんとなく石川直宏そのものと印象の被るところのある一枚になっています。
『Stompin' On Down Beat Alley』というと「歌もの三部作*4」がどうしても話題としても印象としても先に立つアルバムだけど、個人的には#10「暗夜行路」が印象に残る一曲です。
#1、#2といった辺りのパンクでエネルギッシュな楽曲も、勿論大変スカパラらしくて素晴らしいのだけど、#10に一曲通して横たわるアンニュイな空気と、シンプルなメロディに満ちるドラマティックさが堪りません。それぞれのソロパートの誘う郷愁、その後に続くブレイク?はエフェクトがかかって、本当に暗中を手探りで彷徨うように頼りなくメロディが反響して、聴く者の心に畳み掛けてくる。しかし決して途惑いに弱りはてるのではない、一つ強い意志の貫かれた強い印象をももった一曲。この曲は私にとって白眉の出来です。
ああ。暗闇を手探りに進むような、でもそこに強い意志は貫かれているような曲って、それはナオのイメージとまんま被るなぁ、などと、妄想めいた発言をしたりしつつ、改めて聴きなおしてみた次第です。
とりあえず私は「カナリヤ鳴く空」が未だに大好きすぎました。チバユウスケのヴォーカルはやはり半端なかった。谷中の歌詞がまた…。あれは一体どうすればいいんだという秀逸さだからね…。いっそ卑怯。仮にもインスト集団なのに、あの歌詞センス!(笑)

*1:一度目は鹿島の田代選手…

*2:どうでもいい話ですが、この試合終了後、挨拶周りをしていらした選手達を見ていると。バック席へのお辞儀の後?観客に向かって鈴木啓太さんは、蕩けんばかりの笑顔で両手の指先で空中に「ハートマーク」を描いて歩いて行かれました。あんなことして様になるのは、あの世代では今もって啓太さんくらいなものだと思います。その瞬間、自らの目を疑い、「お前はアイドルか!」と声に出してつっこんだのも今や昔。…その時の印象があまりにも強烈にすぎて「あの瞬間が、啓太記念日」くらいの勢いで、私は今でも鈴木さんの活躍を見守っているのでございました。閑話休題

*3:多分

*4:#2 めくれたオレンジ (featuring 田島貴男)、#8 カナリヤ鳴く空 (featuring チバユウスケ)、#12 美しく燃える森 (featuring 奥田民生) の、爆発的ヒットとなったシングル3曲を指して