横溝正史「獄門島」
- 作者: 横溝正史
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 1971/03/30
- メディア: 文庫
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横溝の作品は、平成の現在に読むと、ちょっとドキッとするような言葉や言い回しが多く出てきます。いわゆる「自主規制用語」*1が、かなり多く出てくる。恐らく現在だったら出版前のチェックで引っかかって、他の言い回しに差し替えられるだろうな。本の最後には、「作品発表時の時代的背景と文学性を考え合わせ、著作権継承者の了解を得た上で、一部を編集部の責任において改めるにとどめました」と注意書きが添えられています。
作品の書かれた時代を考えると、恐らく不当な差別だなどの意識なく使われていた言葉なんじゃないかとも思います。また「夜歩く」もそうでしたが、この話も、作品の根幹に深く関わるような部分で使われる言葉や言い回しは、簡単には差し替えが出来ないなど、難しい問題が色々あるのだろうと思う作品でもありました。
自主規制用語というのは概ね理由があって使用を制限されている言葉なので*2、そうした言葉の使用を奨励しようとは決して思いませんが。しかし作家が作品を書く時には、その言葉を、考え抜いて選ぶべくして選んで書いたのに違いない。それを思うと、それまで使われて来た言葉を差し替えるというのは、迂闊に出来ることではない、とても難しい作業だなぁと、思ったのでした。
どれくらいオリジナルから言葉を差し替えたのか判りませんが。「夜歩く」も「獄門島」も、作品の重要な部分で出てくる言葉が、現在では尽く自主規制用語になっているもので、恐らく差し替えられずに使用されている為。読み進みながら、「うわ、こんな単語が」とか、「こ、こんな表現が」と、作品の内容とは別の動揺を感じました。…。古い作品なんだなぁ。