第24節、対FC東京戦。

選手同士の接触から、救急車がピッチに入って怪我人を運び出す、衝撃のロスタイム。
岡田さんが「試合のことは、ちょっと忘れてしまった」とコメントしているのが、私にとっても正直な本音だった、この日の試合。それまで90分間の試合の記憶は、あの瞬間に飛んでしまっていました。前回のコンフェデでの悲しい出来事が脳裏を過ぎって、ただ無事でいて欲しいと願うだけでいっぱいでした。
このエントリを更新する現在、ルーカス選手の容態は快方に向かって病院も退院、自宅で静養されるとのこと。やはりロスタイムに怪我をして担架のまま退場となった石川選手も含め、少しでも早く元気になられますように。

ところでこの試合の警告で、松田さんは二試合欠場が決定。…次節24日の浦和戦はお休みですか、そうですか…。試合中のジャッジの出し方*1に妙な違和感を感じなくもありませんでしたが、しかし松田よ。あの警告の貰い方はなんだ。貰わなくてもいい警告だったのじゃないの…。しかし既に貰ってしまったものを、今更どうこう言っても仕方ない。
神戸戦から引き続いて、とりあえず守備は安定してきた感があるので、最終ラインの顔触れが、このタイミングで代わってしまうことが、特に次節の浦和戦にどう出るのか。不安がまるでないとは言い切れませんが、そうした事態に際していつも確実に体を張って活躍してくれる河合や勇蔵の存在も心強いし、今回欠場した那須も帰って来ます。当然、相手に不足はない。
山瀬はちょっと怪我があるそうで、今節はベンチ入りもしませんでしたが、はてさてどうなることやら。次節はG大阪と鹿島の対戦もあるそうで、浦和は意地でも勝ちたい試合でしょう。面白い試合になることを期待したいと思います。

以下は生観戦していた人間として、あのロスタイムに際して考えたこと。今更の長文になりましたので、畳んでおきます。



今まで観戦した中で、もっとも印象深い一日になってしまいました。しかし同時に、もっとも「試合そのものの印象の残らなかった」一日でもありました。

まあ、もうロスタイムの出来事に関しては、ニュース等で流れている通りで。選手同士の交錯から怪我人が出て、後半ロスタイム中に15分近く試合が中断。ピッチに救急車が入って、ストレッチャーで選手を運び出すという事態が起こってしまった訳ですが。
当初5分と表示されたロスタイムは、半分近く残っていたと思いますが、運ばれて退場したルーカス選手の容態、接触したことに傍目にも動揺の大きいジャーン選手の様子を見ていて、とても続けられないことは容易に判る。
救急車が会場を後にして、ライン際から一度ボールが投げ入れようとされた時、「続けるのか?」と目を疑いそうになった。少なくとも私は、それくらい気もそぞろだったし、戦意を喪失してしまっていた。ただこれは便宜上「一度中断した試合を再開させた」という格好を取る為の措置で、選手も誰一人、ポジションに動くという様子も見せず、投げ入れられたボールはすぐに蹴りだされ、試合終了となりました。笛が鳴ったのを聴いた時は、正直ほっとしました。
試合後コメントや、両チーム監督のコメントなどを見ても判るけれど、やはりとても試合を続けられるような状況ではなかった。だから穴沢主審が関係者との協議の上、ああした形でロスタイムを打ち切る判断をされたことは、よかったんだと思う。私にとっても有難かったです。ピッチにいる選手達は、スタンドで見ていた私達より、よほどショックが大きかっただろうと思うのです。ああした事態が起こる前にあった戦意を、もう一度奮い起こさせることは惨く思えた。私には彼等*2が、これ以上、戦うのを見るのは忍びなかった。あの状況の、あの選手達を「戦わせるのか?」と思ったのです。だから本当にあの段階で、試合を終わらせてくれてよかったと思いました。

ルーカス選手が動かすことも躊躇われ、点滴などの処置が始まると、尋常ならざる事態だと知れると、会場の各所から彼に対するコールが起きました。東京側から彼が倒れたと判った時から何回も続いたルーカスコール*3に、マリノス側からも自然発生的にコールが湧いたものです。
私は自由席の2階バック寄りに座っていて、やっぱり手拍子をし、コールもしました。ルーカス選手に万一のことが起こって欲しくはなかった。なにもすることが出来ないから、せめてという気持ちでした。あのコールは、祈りの気持ちだったと思うんです。無事でいてくれという会場の願い。それが届いて欲しかったから、マリノス側からもそうした声が上がっていたのではと思う。

勿論、コールや手拍子をしないからと言って、そうした人が心配をしていないとも思わない。
横浜のサポだから「東京のコールは出来ない」と考える人の気持ちもよく判る。一つのチームを応援する立場を強く自負する人にとっては、自分達のチームチャントが特別なものであるように、相手側のチャントもまた、そこに深い愛や思い入れが詰まっていることも充分に知っている。だから、あのロスタイムには東京側にコールを譲って黙っていたという人もいる。
そしてもし試合が続行されるのなら、戦意を喪失した選手の頬を張ってやれるのは俺達のコールなんだ、続行されるなら一緒に戦うと、決然と心を鬼にされる人もいたと思います。そうした気持ちの持ち方もまた、一つのあり方です。殊に今年苦しい状況のACLを戦って来たマリノスゴール裏が、そうした毅然として前を向く集団になろうとしていることも、少しずつ伝わって来ている。
色んな人がいて、互いのやり方に違和感を覚えたとしても、それはきっと当然のことなんだろうと思います。

昨日あの瞬間に、私は手拍子とコールをしたことを後悔しません。
でも「軽々しく、相手の敬愛する選手のコールをしたこと」には、もう少し配慮と躊躇いを覚えるべきだっただろうかと、改めて今、考えたりもしています。これは東京のサポーターの皆さんに対しても、横浜のサポーターの皆さんに対しても。
以前どこかで、クラブで使っている選手コールを、代表の試合で使われることに、違和感を感じる方々もいるんだと聞きました。そういう考え方の人が全てだとは思わないけれど、自分のチームの選手を敬愛すればこそ生まれる違和感だとも思うから。色々と考えていかなければと思います。



今回のことで強く思ったのは、『「なにが正しくて、なにが間違いなのか」という問題ではないんだ』ということ。昨日、あの会場に3万を越える人が集まっていました。つまりあのスタジアムには、3万通り以上の考え方と感じ方があったのだということです。「相手選手へのコール」をするか否か――、それは個人の考え方の違い一つだったと思います。
ただ、何が(あるいは誰が)いいとか悪いとか、そういう風に考える問題ではなくて、「そういう風に感じる人がいる」ということを、『否定しないだけの包容力ある場所』であって欲しいなと思います。マリノスのゴール裏という場所に、多くの考え方を許容出来る、素敵な場所になって欲しいと思うのです。
何しろ6万以上も入るホームスタジアムだから、今少しずつ努力していることがいつか実を結んで、きっと懐の深いゴール裏を作れるだろうと思います。是非そうなって欲しい。私は私なりに、会場に足を運ぶことから始めているところです。

*1:偏りがあるということではなく、主にタイミングとかみたいなものが

*2:どちらのチームの選手も

*3:で、あっていると思うのですが、間違いだったらごめんなさい