青い空見えぬなら 第31節、清水戦。

「後半に見せたあの姿勢が前半から見せられれば、あるいは」。最近の横浜の試合を見た後、多くの人に持たれる感想の一つが、恐らくこれじゃないかと思います。今回も例に洩れず、そんな展開。後半途中、中盤で選手達が近い距離で、細かいパスを小気味良く回し始めた時は、わくわくして嬉しかった。ああ、それ、それが見たかったと思って。ごく一瞬でも、とても嬉しくなった。でも、良い時間は長くはなく、ファウルから与えたFKであっという間に失点。
 山瀬のボランチ起用とかわりに面白さを感じさせるものはあったし、哲也も他の選手の皆さんも、それぞれに頑張った部分は見えたとも思うんだけど…。最終的に90分が終わって笛が鳴った後に残った感想は、「藤本淳吾劇場」だったということでした。…。

【ゲームデータ:http://www.f-marinos.com/topteam/report/?code=1163558530】 / 【ゲームレポート:http://www.jsgoal.jp/news/00040000/00040880.html



 TV中継観戦でした。この日の中継は金田さんが解説に入っており、そのせいか多少、全体に横浜に偏った内容の解説になっていました。金田さんは横浜の現在の不調を、「リアクションサッカーで優勝していたチームが、アクションサッカーに切り替えようとして、うまく行っていない状況」として話していました。「今季開幕4連勝が、結果として周囲をとても警戒させてしまった」とも。
 個人的に横浜というチームを象徴している言葉に感じられたのは、「チームの重心がDFラインにあって、彼等が主導権を常に握っている為、本来攻撃の主導権を握ってボールを引き出す側の攻撃陣が、守備陣のタイミングや考えに従って走らされている」というコメントかな…。
 もっともこれは守備陣が恐怖政治で有無を言わさないということでは勿論なくて、チーム全体として、動きが足りないから一本長く蹴るみたいなことでもあるだろうし、動こうとする意識が足りないことで「一撃必殺を狙う(=楽をして得点しようとする)パス」を選択させるのかもしれない。動きが足りないとか、動きの質とか。ずっと言われていることで、今更私が言うことでもないよなあみたいな気持ちが湧くくらいのところですが。意識を変えていくということは、難しいし、とても時間がかかる。今年一年が、それらを少しずつ身に付けて、整理して、新しい方向へ向かっている時期なのかなと。解説を聞きながら、改めて思ったりしていました。

 試合後、水沼さんは「0-1よりは、2-3の負けの方が意味がある」という主旨のことを仰っていたようです。まあ…それはそうかもしれない。複雑な気持ちですが、今までのことを思えば2失点した後で2点追いつけたことは、確かにそこは評価出来るのかな、してあげたいなぁという気持ちはある*1。スコアを見たら、シュートを19本(枠内10本)を打っている。前半30分くらいまで殆どシュートを打っていない時間があって、正直どうだろうと思いましたが…、後半は攻めていて、枠に飛んでいる本数も多い。坂田が7本打っていることを考えても、決めて欲しかった部分はあるけれど「攻撃的に行こう」という気持ちを表そうとした結果、ではあるのかなとも思います。ただどちらにしても、ホームで3失点して負けたことの寂しさは消しがたい…。その点は、残念でした。



 以下は、昨今の雑感など。
 なんだか最近、負けて「悔しい」より、負けて「寂しい」気持ちになるのです。最近、横浜の試合を見ていても「悔しい」より、「寂しい」が勝るのは、なんでだろう。試合は一つ一つ同じじゃない、でも同じことの繰り返しのような試合であることが寂しいのか。それともなにがしたいのか見えてこない試合の内容が寂しいのか。負けがこんで単純に悔しいと思える気力が湧かないのか。悔しいと感じるにも、それなりの内容や心の充実が必要なんだ。そんなことに気付きました。本当に、そんなことにばかり気付かされる、切なすぎる昨今です。
 選手コメント等読んでも、印象としてループしているような風にしか受け取れず、これがまた寂しくなる原因でもある。ただ、これは選手達も必死でやっている中で、明確な原因や対処法が見えてこないからこそ、そうしたコメントが出てくるのだろうし、そういう芳しくない結果になっているのだろうから。コメントを拾っていても、なんとも言いがたい気持ちになります。
 もう残留は確定させているので、とにかく後は一つでも多く手応えを得ていくことで、自信を少しずつでも掴んだり、それを天皇杯へ繋げる足がかりにしたり、という必要があるのだと思いますが。現状では、手応えがなかったわけではない、でも多くを得たわけでもない、という感じの微妙な試合が続いていますね。選手も気持ちを繋げていくのは、やっぱり大変だろう…。

 先週のキクマリ*2を見ていたら、中澤ゆーじさんが「もうブーイングは、きついので」とコメントしていましたよ。その言葉が、なんとも言いがたく苦いものを含んで、しんどそうでした。「そりゃそうだよなぁ」と思いました。しかも選手の皆さんだって、この現状に納得がいっているわけではない。自分の中のもやもやもある。結果を出せていないことを、一番よく判っているのは彼等だから。尚更、堪えるだろうなぁと思います*3
 勿論、彼等はプロだから、そうした観客からの厳しい評価や反応に晒されることもまた、当然のことではあるのですが。ピッチに出て戦う選手は11人。その僅かな人数で、2万からのブーイングを受けるのだと思うと、その瞬間の気持ちやそれを受け続ける状況での精神状態など、とても私の想像は及びません。滅入るだろうとぼんやりした想像をして、選手に思いを馳せるくらいのものです。



 で。話は突然変わるようですが(最後には一応繋がります)。
 先日、唐突に宇多田ヒカルの「COLORS」を聴きたくなって、久しぶりに聴いて、歌詞を改めて読み直したのです。あの歌、1コーラス目のサビが、ちょうどトリコロールを唄っているんですよね。青と白と赤。勿論、横浜のチームカラーとしての青・白・赤と、唄われている歌詞とでは、それぞれの色に持たせている意味合いが違うんですが、なんとなくタイミングの問題で、はっとする内容に思えました。*4
 有名な歌なのでご存知の方も多いと思いますが、こんな歌詞です。

青い空が見えぬなら青い傘広げて
いいじゃないか キャンバスは君のもの
白い旗はあきらめた時にだけかざすの
今は真っ赤に 誘う闘牛士のように

 プロとして不甲斐ない試合をしてしまった時には、その現実を謙虚に受け止めなきゃいけない。ブーイングも*5そうした現実の一つ。ただ、その試合後の一時、感想を表現する何がしかの反応を終えたら、選手がそうであるように、応援する私もまた新しく次に向けて、気持ちを切り替えていかなきゃいけない。こちらがもどかしい気持ちを覚えたのと同じように、選手も同じだけ(あるいはそれ以上に)もどかしい気持ちを感じて、尚且つ、それを必死で切り替えて次に臨んでいるのだろうから。そうしてくれるだろう選手の皆さんに、私も少しでも応えられるようになりたいなぁと、そんなことを思ったのでした。いや、なかなか今年は試合を見にいけないので、こんなこと書くのもおこがましいんですけども…。
 でも悔しいより寂しいとか言ってしまう、弱い自分の心をさ、戦えるようにしないといけないなぁと。こちらも選手の皆さんに対して、胸を張って応援していると言えないかなと思ったのです。いつでも胸を張って、応援していると言えるように、頑張って行かないとね。頑張ろう。横浜は今はちぐはぐで、上手く行っていないけれど。いつか「この苦しい時期があったからこそ」と思える日が、彼等に訪れるんだと、思いたい。それにどれくらいの時間がかかるか判らないけれど。
 青い空が、今はたとえ見えなくても。何度だって頑張ってやり直してくれるだろう選手の皆さんに、応援で青い傘を広げてあげられたら。いつだって、希望を描ける青い空にでも、闘志を滾らせる赤い布にでもなってあげられたら。ほんのちょっとでも、気のせい程度でも、少しでも君達を支える青い空や赤い布になりたいんだ。そんな夢見がちな希望を、気持ち悪くこっそり抱えながら(苦笑)、今は彼等の応援をしています。
 何かをつかめるまで、何度だってやり直せばいい。新しい手応えが得られるまで、白い旗は、まだ掲げさせないぜ。

*1:いえ、「してあげたい」などと何様かという話で恐縮ですが…

*2:横浜の情報番組「KICK OFF F-MARINOS」の意。念の為

*3:だからブーイングするなということではありませんよ。念の為。ブーイングをしたい人は、必要だと思えばすればいいと思うし、やりたくない人はやらない自由があると思っています。色んな価値観の人がいるのがスタジアムだから、ルールを守って観戦している限りにおいて、どちらの考えの人がいてもいいし、どちらかがどちらかを排除するのも違うと思うのです。閑話休題

*4:歌自体は全体に思わせぶりな表現で、どこか不気味な印象を思わせる歌詞もあり、なにもかもが示唆的に響いたわけでもないのですが。

*5:よほど常軌を逸したり、ルールを違反したりする反応でなければ